甲状腺眼症・バセドウ病に伴う目のまわりの炎症

甲状腺眼症・バセドウ眼症

眼症の症状としては、
●眼球が突出してくる
●まぶたが腫れる
●上まぶたが過剰に上がり、目の開きが大きくなる
+下方向を見たとき上瞼が降りてこず、特に下に目を向けた時にひんむいたような眼になる
●目の向きが一致せず、物が2つにズレて見える複視 (特に上方向を見たとき)
●下まぶたのまつ毛が目に当たるようになる
●寝ている間も目が完全には閉じていない。そのため起床時に目が痛く充血もする
●目の奥が痛いか圧迫感がある
●目の表面の異物感や乾き
●まぶしさに敏感になる
●視力の低下 視野が欠ける

などがあります。
※あまり知られておらず、重要な点は、実はこれらの症状の多くが異常な眼球の前方移動(突出)が原因となっており、眼球突出を軽減させる手術によって外見的な問題だけでなく、眼の違和感や流涙などの多彩な症状がかなり軽減するという事です

↑2度の手術を経て眼球突出を改善させたかたの体験談です。具体的で説得力がありますので、ぜひ目を通しておかれてください。※当院の患者様ではありません。

患者様にとって難儀なのは、現状、ほとんどの医療機関において経験が蓄積されていないためか?この疾患を疑い、検査・診断し、治療可能な病院がどこかを調べてそこを紹介するところまでができる医師さえもごく限られている事です。現に、眼科を受診してもただの「ドライアイ」「アレルギー性結膜炎」だとされて目薬だけ出され治りもせず、ずっと通うか諦めてしまうパターンに陥っている人が居ます。

甲状腺疾患特有の全身症状は、甲状腺ホルモンの血中濃度に異常がある事によって出ますが、それと眼の症状は必ずしも同時に起きるわけではありません。概念としてとっつきにくいところですが、自己抗体によって甲状腺が攻撃される病気と、目の周囲が攻撃される甲状腺眼症は別個の疾患と考えておかれたほうがよいでしょう。

内科から処方される薬はホルモン量を上げ下げするものであって、眼の周囲の自己免疫炎症を緩和する薬ではありません。バセドウ病の治療をしているから甲状腺眼症のほうも安心、とはなりません

その事を詳しく言うなら、例えば交通事故で足の骨折手の骨折が生じたとして、足の骨折だけを治療したら、手のほうは何もしなくても良いのでしょうか?そうでは無いですよね。手の問題は手の治療をしないとなかなか改善しませんし、変な状態で固定してしまうかもしれません。手も足も傷病発生の原因が同じ一つの交通事故だとしてもそれぞれの治療が必要でしょう。
それは甲状腺眼症も同じくなのですが、そこを誤解しておられる方が医療従事者でもとても多いです。

バセドウ病の内科外科治療と、甲状腺眼症の治療を終えた患者さんが過去を振り返ったとき、「この病気になって一番つらかったのは目の症状だった」というお話を聞く事があります。
この自己免疫疾患にかかってもっとも困る症状がホルモン値異常からくる症状ではなく、目の症状だという事すらあり得るのに、眼に関する症状が軽視され、聞き流されている現状があります。

バセドウ病と診断されて治療がはじまった後、甲状腺ホルモンの数値が正常化して安定したにも関わらず眼の異常が出現したり、あるいは眼やまぶたの異常が先に出て、その時は正常範囲だった甲状腺ホルモン値が1年たってから遅れて異常が現れてくるケースもあります。
甲状腺ホルモンの値はその時点では正常であっても、甲状腺を攻撃する自己抗体の有無を血液検査で調べる事で甲状腺眼症であると判定できるケースがあります。

検査

治療の前に、腫れや突出や眼瞼後退があれば、何に進むにしても必ず他施設でのMRI検査の予定を組むことになります。結果はMRI実施日当日に受け取れます。MRI検査があると聞いて急に当院受診予約を撤回なさるかたがおられますので、MRIがあることはあらかじめ知っておいて下さい。
※閉所恐怖症のかた、体内に医療機械を入れている方は受けられません。

甲状腺眼症は炎症が激しく起きている時期と、その後に病状が固定化した時期では実施できる治療が異なるため、どの病期にあるのかの判定がまず必要で、そのために最も有用なのがMRI検査です。※造影剤の注入は原則必要ありません。

MRI撮影のようす

判断するには通常とは異なるMRI撮影法が必要であり、この眼瞼外来では他施設とも連携してMRI検査を受けていただけるように手配が可能です。そののちに、パルス療法や手術などが適応になりそうであれば病状やお住まいの地域に応じて各専門領域の医師にご紹介を行っておりました。
※眼窩減圧術まで進まれる場合はCT検査も求められる事があります。

治療

上記のように、同じ甲状腺眼症といっても異常の出る部位は多彩であり個人差が大きいため、必要となる治療も患者様によって異なります。ステロイドを比較的短期間に大量に点滴する事を数回繰り返すステロイドパルス療法(原則、入院が必要)、眼球突出を改善する眼窩減圧術、眼周囲組織への放射線照射、斜視(目の向きの異常)に対する斜視手術やプリズム入り眼鏡処方、逆まつげや眼瞼の位置異常に対する眼瞼手術など様々な治療があり得ます。

全てを一つの病院でカバーする事はできず、上記の治療法のうちいくつかを行なっている病院があるだけですから、複数の専門家に受診する必要があります。そこがこの疾患の難しいところです。

当院でできる事

ケナコルト(トリアムシノロン)局所注射、ステロイドパルス療法放射線治療、眼の向きを改善する斜視手術、突出した眼球位置を後退させうる眼窩減圧術などはいずれも当クリニックにおいては実施できませんので他院へ紹介することになります。

しかしそれ以前にまずさきに大切なのは、そういった本格的治療へ進む必要があるのかどうかを判定する段階です。

そしてまた、それらの治療の必要性があるとしても、では実際にどこの病院がその治療を行なっていて、どの医師に診てもらうのかが重要で、この具体的な通院先の選定こそが実は最も難しいかもしれません。

しかし当院では、毎年新規の甲状腺眼症患者さんの来院があるため、福岡市近隣の病院であれば、どこの総合病院が実際にどういう治療をやってくれたか、あるいはどこは断られたかは患者様から聴取しております。

甲状腺眼症に詳しい医師は眼科医の中でもきわめて数が少なく、多くは医師からの紹介無しで直接受診する事がなかなか難しい状況です。しかし受診しやすい一般的な医院だと(この疾患とその治療は認知度が低いためか)、医師から「元々そういう目なんじゃないんですか?」「内科の飲み薬を続けてれば目も治るんじゃないの?よく知らないけど」「うちでは扱って無い」「治療法は無い」などと間違った事を言われ紹介状も書いてもらえず終わってしまう事も多いようです。これでは診断にも治療にもつながりませんね。

まぶたの腫れの有る無しは、眼科分野の症状の中でも判断が難しいものです。内科はもちろん眼科であっても、まぶたに関する診療経験がほとんど無い医師に、(特に初対面では)まぶたの腫れがあると訴えてもほとんどの場合、正しく認識し対応してもらう事は期待できない場合が多いです。

私自身も眼瞼の診療で初学者のうちは、まぶたの厚い薄いも腫れの有無もピンときませんでした。現在でも腫れか脂肪量増加かは見定めにくいケースはあります。自分自身の顔なら誰しも腫れは確実に認識できるのですが・・・

目の開きが大きくなり過ぎている方、最近眼が前に出てきたと感じられている方で、診断や総合病院紹介を受けたいかたは、必ず過去の顔写真をご持参の上で当院の眼瞼外来をご予約ください。すでに内科で甲状腺疾患であると診断されている方は紹介状または血液検査データを眼科受診時に必ずご持参ください。

↑眼窩減圧術が成功し喜んでおられる方の動画です。35秒と短いのでご覧ください。
突出した眼球位置を改善する治療は存在するのです(※当院では実施できませんが、これまでに複数の紹介実績あり。但し他県)。手術によって突出が改善するときは病状が進行する際とは逆に、目の前後位置のみでなく左右に目が離れた状態もいくぶんせばまる事がほとんどです。

他職種集合図

中等度から重症の甲状腺眼症の診断と治療は一人の医師のもとで完結するものでは無く、内分泌内科眼科放射線科など、複数の科と病院が交互に患者さんに関わる必要があります。
入院での治療もあり、看護師視能訓練士など医師以外の多職種の連携も欠かせません。ただ、どこにそんな輪があるかはなかなか見えづらいものです。

当予約制外来では、甲状腺眼症の可能性も考慮して検査をすすめ、疑いが強ければ適切な総合病院等へ紹介するという事を行なっておりました。それはほんらい、どの眼科でも実施可能な事のはずです。

どの病院で何の検査を受けて、その結果次第でステロイドパルス療法目的ならA総合病院へ紹介するか、あるいは眼球を後退させる手術の適応かどうか診てもらうためならB病院へ行っていただくか、それらをどういう順序にするかなど、医療資格のある私たちでも悩むケースは多いです。そこに患者さんの通院可能な範囲の病院という地理的要素まで加わるとなおさらです。
治療の部位や手段が広範囲の専門領域にまたがるため、この疾患の治療には患者さんの流れを交通整理するような医師が必要です。※それに加えて、ご本人の通院の根気も重要です。

当院医師は眼瞼下垂など眼瞼疾患を長年扱い、まぶたの位置をオペで動かしてきた経験から、比較的早期段階でもこの疾患を検知しておりました。※それでも過去のお写真は必要です。

よくある甲状腺関連疾患について困り事

Q. かかりつけの内科でTSAbを測定してくれません。梶原では測定可能でしょうか?

当院で甲状腺眼症と関連が深いとされる自己を攻撃する抗体のTSAb(甲状腺刺激抗体)は測定できます。
TRAbとTSAbのうち、甲状腺眼症の病勢により相関があるのはTSAbのほうですが、保険診療のルールで同じ月に両方を請求はできず、ある医療機関において、ある月に両方の抗体検査の料金請求ができません。
(目の問題ではなく)バセドウ病の病勢の内科的判断にはTRAbのほうが有用なので、内科ではTSAbは測定がされていない事が多いようです。

Q. 眼球突出がひどいのですが甲状腺眼症に詳しい眼科はどこにありますか?

A. 難しい質問です。甲状腺専門の内科医も患者数の割に少ないですが、甲状腺眼症で主に問題となる眼窩を専門とする眼科医はさらにさらに少ないのが現状です。一人も居られない都道府県も多くあるでしょう。私が知る限り甲状腺眼症治療を手がけ、目の突出の手術治療までカバーしておられる病院は下記の通りです。
(北海道) 手稲渓仁会病院
(東京) オリンピア眼科病院
(東京) 帝京大学医学部附属病院
(東京) オキュロフェイシャルクリニック東京
(群馬) 新前橋かしま眼科形成外科クリニック
(愛知) 愛知医科大学 眼形成・眼窩・涙道外科
(大阪) 大阪医科大学 眼科
(大阪) 大阪大学 眼科
(大阪) オキュロフェイシャルクリニック大阪
(兵庫) 神戸海星病院
(兵庫) 兵庫医科大学病院 眼科
(福岡) 林眼科病院
※専門外来を受診される場合は、予約や紹介状が必要な場合がありますので事前に病院に確認されてください。

Q. 私はバセドウ病があり、最近瞼が腫れて目が出てきてる感じなので近くの眼科にかかりましたが、「特に目に異常ありません」とだけ言われ、それ以上どこも紹介もしてもらえません。どうすればいいでしょうか?

A. それはとても苦労されていますね。
かかっておられる内科の先生に相談して当院または、上記のような甲状腺眼症を扱う病院を紹介してもらうか、遠方のかたでしたら眼科は別のところへもあたってみましょう。すでに眼科は受診ずみだとお考えかもしれませんが、甲状腺眼症でおもに問題が生じる部位は眼球内部ではないので、同じ眼科医でも知識経験のばらつきが大きく、見立てがかなり異なる可能性があります。

Q. 甲状腺の病気に詳しい内科医師はどう探せばいいですか?

A. 日本甲状腺学会に認定医名簿がありますので、そこから探されてはどうでしょう。他にも甲状腺関連の学会はありますので、認定医の名簿が載っている甲状腺関係の学会ならそのサイトから調べてみられてはいかがでしょうか。

(外部サイトへのリンク集)

(漫画)あたい、美人病になりました! いさやまもとこ著 ←バセドウ病と甲状腺眼症になった著者のつらさ、心の葛藤がとてもよく描かれています。※眼窩減圧術については出てきません。
TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」2018年6月8日(金)放送分 上記の漫画の著者いさやまもとこ氏と甲状腺専門医がラジオでバセドウ病について対談。今のところネットで聴けます。
特集:バセドウ病と目の病気←とても参考になるサイトです。
オリンピア眼科病院←リンク先の「よくある質問」のなかで甲状腺眼症についてわかりやすく解説されています。
ここをクリック←眼球突出を治療する減圧術の術前術後の画像検索結果です。(海外版)
甲状腺眼症がよくわかる本←医学に詳しくない方にもおすすめの参考書籍です。

余談ですが、当院は「甲状腺眼症 福岡」とか「バセドウ病 眼科 福岡」などで検索するとほぼ最上位に出ます。それはほとんどの眼科が実際取り扱っていない事もあり、甲状腺眼症に関して何もHPに記載していないためです。

甲状腺疾患の患者さんを多く抱えている専門の内科の先生からは、甲状腺眼症の有無について相談できる所をどこかにしっかり確保されているはずですから、ご相談なさってください。相談先を確保していないようなら、梶原アイクリニックへ紹介状を出してもらうようにお伝えください。

甲状腺関連の眼病の進行を遅めるには禁煙が最も重要です。副流煙さえも目の症状悪化の一因となります。

当院の予約制外来では当面、甲状腺眼症については甲状腺の病気でかかりつけの内科の先生からの紹介状をお持ちかたのみ受付いたします。
※藤野クリニックは皮膚科のため甲状腺関連の病気の方は梶原でのご予約をお願いします。
予約方法はこちら←をクリック

甲状腺眼症についてだけは、受診後に何を行うのかが一般の眼科医でもわからないほどに微妙で、ケースバイケースなため、当院事務員に電話やメールだけでご質問をいただいても、正確なご返答はできないのが実情です。メールのみで情報を得ることは難しいとお考えください。

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